ルイーズは何でも知っている(アンティーク恋噺3-4)
「ルイーズは何でも知っている」アンティーク恋噺3-4
3-4
その次の週も、そのまた次の週も、ルイーズは雑貨屋さんに行き、ビクターと少しずつ言葉を交わした。魔法の洞窟に潜む宝石を集めるように、ルイーズはビクターの秘密を一つ一つ胸にしまっていった。
親がフランスとイギリスの物を売り買いしている仕事だから、家族でフランスとイギリスを行ったり来たりしているということ。家に弟や妹がたくさんいるから家ではお父さんに似たような役回りをしていること。甘い物が好きだけど、家族の分を買うと自分の分までいつもお菓子が残らないということ。
ビクターの優しい言葉は、ルイーズには宝物そのものだった。家ではママはああしなさいこうしなさいばかりで、ルイーズが口答えすると「ああいえばこういうのね」と返される始末だ。他のきょうだいとも、顔を合わせるたびにやれうるさいだの生意気だの言われて口げんかばかりしてる気がする。
しかし、ビクターは違った。いつもにこにこしていて、ルイーズの話をちゃんと聞いてくれたし、頭ごなしに「それはちがう」とか「バカだな」とか言ったりしない。ビクターが家に住んでくれたらいいのに、とルイーズは思った。
でもこのまま2人とも大きくなったらどうなるんだろう?とも思った。例えば私が14歳だとしたらビクターは19歳。子供じゃなくて、女になっていたら(ママがよくそういうのだ)何かが変わるのだろうか。ママが好きな人とこっそりキスをしているのを見たことがある。見たことはママには言っていない。あんなことを大きくなると誰でもするのだろうか。
ルイーズは窓の外を見ながら、自分がビクターとキスをすることを思い浮かべた。ママやパパとはおやすみのキスをするけれど、それとは違うやつだ。場所はどこ?いつものあの雑貨屋さんの棚の奥で。ママに見えないところで。考えただけでも、それはなんだかとっても悪いことのような気がした。こっそりしようとするから悪い気がするのだろうか。でも、お店のレジの前ですることはもっともっと恥ずかしいし、仮にビクターに頼まれたとしてもそれは嫌だと思った。でも、どちらにしても、そんな日は永遠に来ない気がした。
(3-5に続く)
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