実録小説風*今日も口紅を買い損ねた話。
ちょっと趣向を変えた文章を書いてみました😊お時間ある時お楽しみ下さい❣️
今年の夏、彼女は子どもたちと訪れた街で口紅を買った。小さな赤いトランクに、化粧ポーチそのものを入れ忘れてきたのだ。
仕方ないのでコンビニで試し塗りをすることもなく買った。赤系とベージュ系の2色が、クレヨンのような形でロケットペンシルみたいに縦に繋がってひとまとまりになっているのだ。
コンビニの洗面所で、すぐに包みを開けて塗ってみる。意外なくらい濃くて鮮やかなベリー系の赤は、たちまち彼女の口の形を顕わにした。
女は顔の他のパーツに比べて、自分の口について今まで気にしたことがなかったが、肌の地が浅黒いことを気にしていた自分がバカのように一瞬思えたのであった。
口紅の色によって肌が綺麗に見えるとか、そんな細かいことを気にする以上のメリットがその口紅にはあったのだ。自分の唇の形が自分が思っている以上に綺麗な形をしていることに、化粧を始めて20年以上もしてから彼女はやっと気がついたのだった。
クランベリーの色をしたそれが、顕わにしたのは口の輪郭だけではなかった。きっと全てはあのコンビニの口紅を塗った瞬間に何かが変わってしまったのだ。
その問題の一色が、先月終焉を迎えた。以来、外出するたびに彼女の足は自然とコンビニに向かう。だが、こういう時に限って行く先々にあるのは、ローソン以外のコンビニなのであった。
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